FC2ブログ

雛見沢停留所にてーONE~輝く季節に~ 

園崎茜はざく、ざくとゆっくりと雪が積もった道を一歩づつ闊歩していく。
着物の上から革ジャンを着込む。その姿は完全なる和洋折衷なのだが彼女は容姿端麗ゆえどんな姿でも似合ってしまう。それは例え割烹着を着ていても例外ではないだろう。
口からは白い息。それだけで外がどれだけ寒いのかを物語っていた。
茜は元々寒がりなため寒いのには一方弱かった。
どうしてこんな寒い時に外に出かけなきゃいけないのかね。
茜はそんなこと思いつつ、足を一歩一歩目的地に向かう。
そしてしばらくして彼女はその目的地に到着した。
木で作られたバス亭、雛見沢停留所。
すでにそこには一人の少女が茜の来るのを座って待っていた。彼女は長袖の巫女姿をし、ウェーブのかかった髪に頭から角を生やしていた。顔立ちはとてもよく整っており、美人というよりも可愛いと呼ぶに相応しい。
茜は申し訳なさそうな顔をして「遅れてごめんね」と声を掛けた。少女は首を左右に振りそんなことないと言う。
そうして茜は雛見沢停留所の中に入り少女の座っている隣に腰を下ろした。
寒さがまだつらい日に起こったたわいのない雑談。
兎にも角にも園崎茜の三度目の物語がこうして幕を開けるのだった。



雛見沢停留所にて-ONE~輝く季節に~



少女が書いた一通の手紙が園崎家に送られたことがことの始まり。
彼女は名前を古手羽入。
どうしても相談に乗って欲しいことがあるのでこの時間、この雛見沢停留所に来て欲しいと。
そうして茜は手紙に書いてあった現時刻、すなわち12月22日23時に来たのであった。
「それであんたがこの手紙の差出人の古手羽入なのかい?」
「はい。私が書きました」
「ふ~ん。じゃ、単刀直入に訊くけどさ。私に相談したいことって一体なんなんだい? しかもよりよってクリスマス前だというのに」
すると羽入は笑みを浮かべた。
「な、なんだい? 私変な質問をしたのかい?」
「いえ、そうではありません。茜。ただ私の姿を見ても驚かないから……」
「驚くってあんたにかい? そりゃあんたは可愛いからレナちゃんあたりが見たらお持ち帰りされるんじゃないだろうね」
茜は冗談っぽく言うと羽入もええと相槌した。
「でさあ」と茜。「あんた本当に何者だい? 私はあんたのこと見たことないんだけどね」
「はい。存じてます。『この世界の』園崎茜は私のことを知らないはずですから」
「……この世界の私?」
怪訝な表情を浮かべる茜。羽入は続けた。
「私はオヤシロ様なのですよ」
「あんたが? オヤシロ様ってもっと喧々囂々なモノだと思っていたのにこんな少女だったとは吃驚だねぇ。でそれがこの世界の私とどう関係があるんだい?」
茜が訊くと羽入は憂いな表情を浮かべながら口を開いた。
「唐突ですが今貴女が生きているのは昭和58年ですよね」
「ん? 本当に唐突だねぇ。ええ、そうだけど。それがどうかしたのかい?」
「私は平成14年夏コミックマーケット62で07expansionというサークルから発表された同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』から来ました」
「来ましたって未来人にしてはやけに具体的だねぇ」
「はい。だって茜がいる世界をそのままゲームにしたのですから」
「……ってことは私やあんたがその、『ひぐらしのなく頃に』なんてゲームに主演しているのかい? そりゃ驚いた」
嬉しそうな顔を浮かべる茜を尻目に羽入は表情は硬く、史実を淡々と述べる語り部かのようだった。
「でもさ、この昭和58年雛見沢を舞台にしたゲームってどんなのだい? それと同人ゲームって?」
「はい。まず同人ゲームですが少人数で作ったオリジナルゲームのことです。『ひぐらしのなく頃に』はその同人ゲームの枠から生まれました。そしてその世界は昭和53年から5年連続して起こる連続怪死事件、通称オヤシロ様の祟りというのがある世界です」
「へぇ~私達の世界がそんな風に改竄されているとはね。なんだか楽しそうじゃないかい」
途端羽入は茜の顔を凝視した。
「茜は驚かないのですか? 自分の世界が改竄されたとしても」
「改竄って、そんなの小説とか映画、歌舞伎とかと一緒で用はフィクション、ファンタジー。エンターテイメントだろ? 別に怒ったりしないけどねぇ」
「そうですか……いえ貴女ならそういう対応をするだろうと思っていました。『ひぐらしのなく頃に』は『雛見沢停留所』という舞台用脚本が元になっています。貴女も以前あその世界に言ったことがあるのでもしかしたら覚えているんじゃないんですか?」
「ん? 『雛見沢停留所』ってそれも何かのエンターテイメントなのかい? 覚えてないし知らないね。それはあんた風に言うには『別の世界』の私じゃないのかい?」
 そうですね、と羽入は頷いた。それからしばらく二人は沈黙を続けたのち、
「そうですね。貴女は関係ないです。間違って申し訳ありません」
「はっ。謝られるぎりはないんだけどねぇ。それでなんだか話し足りないみたいだね。続きを話なよ」
「あぅ? 貴女はどうしてそれを?」
 羽入の驚きに茜ははぁと溜息を吐きながら答えた。
「そんなの見りゃ判るさ。それにまだ手紙に書いてあった相談……なんてのも話してないじゃないか。前置きはいいからさっさと話しなよ」
「はい……では話を続けます。その07th-ExpansionはPC上でサイトを持っていて」
「PC? サイト? なんだいそりゃ? そんなものがあるのかい?」
「はい。PCは機械の箱。サイトは回覧板みたいなものです。そしてBBSという書き込み版があります。そこはその『ひぐらしのなく頃に』が好きな人がその想いをぶつけるために日夜書き込みされてます」
「書き込み版……駅前にある連絡板みたいなものかい?」
「はい、そうです。そこで『ひぐらしのなく頃に』の各キャラのファンサイトがあるのです。でその中でもっとも書き込みされているのが『圭レナ派の集い』『圭ミオ派集まれ~』『沙都子組 屯所』『梨花ちゃん死守同盟』『オヤシロ様好き集まれー♪』となっています」
「……なんだい? 私の名前がないじゃないかい! 誰か『茜さん好き好き同盟』とか作らないのかねぇ」
 茜は頭を抱えて嘆いていた。
「えっと、その。『ひぐらしのなく頃に』は前原圭一が主人公の視点が多くて…それで」
「でもその主人公である圭一のファンサイト…だっけ? それがもっとも書き込みされないのはなかなか乙だねぇ」くっくっくと苦笑する茜「それでレナってことは礼奈ちゃん。圭ミオっていうのが魅音かい? なんだか娘に負けたみたいで釈然としないねぇ。それで沙都子組っていうのは……沙都子ちゃんか。そして梨花ちゃん死守同盟……古手さんの娘さんだね。それでオヤシロ様というのは……もしかしてあんたかい?」
 茜の問いに羽入は動揺したが、しばらくしてこくんと首を頷いた。
「へへ~なかなかやるじゃないかい」
「あの、その……私も『ひぐらしのなく頃に』の中ではもっとはっちゃけた役ですのけど……」
「まぁいいさ。あんたはあんたなんだからさ。それで話はもう終わりかい?」
 羽入は首を左右に振った。
「ええっと。実はそこでファンスレの合作を作ろうと言い出しまして。前に一度やったのですがその時は私のファンサイトは参加しませんでした。それでその合作名が『四凶爆闘』というものでした」
「それは『魁!! 男塾』からのパクリかい?」
「ええ!? 茜、男塾のことを知っているのですか?」
「うん? 前に魅音が読んでいた本を取り上げた本がそうだったと思うけど。それに根を持って魅音がいつだったかの綿流しの時に『四凶爆闘』とか言い出したんだよ」
「あぅ……そうなのですか? 魅音はノリで決めたんじゃないんですか?」
「? どうも話が噛み合わないね。まあ私の住んでいる魅音とあんた達が住んでいる魅音はたぶん違うやつなんだろうね。(・3・)は変わりそうにないと思うけど」
「あ、そっちの魅音もそうなのですか」
「ってことはあんた達のところの魅音もかい? 本当に空気読めない娘だねぇ」
 そうして二人は笑い合った。
「まあ魅音のことはいいとして」と羽入。「今回私のファンサイトを入れた『五凶爆闘』というのが開催されます」
「ふーん。ってことは人がある程度集まったのかい?」
「……はい」
 そこで羽入は表情を曇らせた。
「茜。合作を作る上で大切なことは何か判りますか?」
「…………合作ってようは集団作業だろ? 会社や組織でもそうだけど中心人物がいてそれが企画書を作り、そしてそれに対して切磋琢磨しつつ己のいいところをだし、その企画書に近い形の作品……それが大切なこと、じゃないのかい?」
「ええ。茜の言うことは近いです。ですが……」
「ふん。けどそれは別にいいことじゃないのかい?」
「そうですけど……確かにいいですけど。でも違うのです。私が言いたいことは違うのです」
 羽入は体を丸めながら顔面蒼白。精気の籠もっていない瞳をしていた。
 それをみて茜ははぁと溜息をつき、羽入の頭に左手を乗せ、くしゃくしゃと無造作に撫でた。
「あぅ……!?」
「なに悲しい顔なんてしているんだよ。私の言ったことがそんなに傷ついたのかい?」
「………………」
「私のはあくまで一般的な意見だよ。私個人的な感想はね……最高なんだよっ!! って感じだね!」
「最高……ですか?」
「別に誰がってわけじゃいけどね。私の個人的な感想はそんな感じだね。あと合作についてだけどそれは愛が籠もってゆえの行動だと想うけど……うんまあ……最高じゃないのかねぇ」
「あぅ、そうですね……でも相談はここからなのですが」
「なんだい!? これまでのは前置きだったのかい!? また長い前置きだねぇ」
茜の言葉に羽入ははいと申し訳なさそうな顔をしていた。
「……もしかして相談ってあんたと同じ内容じゃないだろうね」
「ええっと……」
「……はぁ。まったくさぁ~。ちょっと立ってくれないかい?」
 羽入は茜に言われるがまま立ち上がる。茜も立ち、
「ええっと。で誰の相談なんだい?」
「古手梨花です……」
「なら行くよ。歯ぁ食いしばりなっ!!」
 そして。


「ようこそ雛見沢へっ!!」


 茜は羽入の体を抱きついた。羽入は突然の行動に言葉がでなかった。
「えっと……茜さん、なんで?」
「なにってハグに決まっているじゃないかい! そして悩んだ時はこうするのさ。『ようこそ雛見沢へっ!!』ってね。羽入。帰ったらあんたも古手さんの娘さんの梨花ちゃんに向かってやるんだよ。そうすれば五凶爆闘とかそんなみみっちぃい問題はすぐに飛んじゃうから」
「そういうもんですかね」
「うんまぁ。そういうもんじゃないのかね。私は知らないけど」
 羽入は何か言いそうな表情をしていたが目を瞑り、深呼吸をすると一変それまでの辛辣な表情と打って変わって穏やかな表情を茜に見せた。
「そうですね。茜さん。私間違ってました。いいんですよね! たとえばオヤシロスレみんな初めてのことでとまどっていたけど……でもだからこそ最高なんですよね!」
「そういうことだよ! それでいいじゃないかと私は思うよ」
 茜はそう言う。
 羽入はどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
「では茜、私はこれで失礼します」
 羽入は満面の笑みを茜に浮かべた。
「別に私は何もしちゃいないよ。当たり前のことを当たり前のようにしただけさ」
「その当たり前のことができないからそれができる人は素敵です」
「そんなに褒めても何もでしゃしないよ。どうする? この後家にでも寄っていくかい? 古手さんの梨花ちゃんも呼んで」
 羽入は首を左右にふる。
「いいえ。それは遠慮しておきます。私の元にいる世界に帰ってからやりたいと思います」
「そうかい。それは残念だねぇ。ではさよなら……じゃないね。『ひぐらしのなく頃に』でも私、園崎茜はいるんだろ? ならさよならじゃなくて……」
「おやすみです」
 羽入の言葉に茜も納得して。
「そうだね。おやすみ、羽入」
「おやすみなさい。茜」
 二人はそう別れの挨拶を交わた。
 そうして羽入はざくと積もった雪に右足を突っ込み、次ぎに左足。右足。左足。右足。左足。
 そうしてだんだん。
 そうしてだんだん。
 羽入は茜の前から消えていった。
 茜は停留所に備え付けの椅子に再び座りはぁと溜息をついた。だがしばらくして遠くの方から茜のことを呼ぶ声が聞こえてきた。
 男女二人。
 その声はだんだんと停留所の方に近づいてくる。
 そしてその声の
「あ、お母さん。やっとみつけたぁ~。本当にこんな夜中にどこをほっつき歩いているんだか」
「全く心配する俺たちの身にもなってみろ、ていうんだよ」
 そうですよね。と女もとい茜の娘は男に相槌を求める。
 男は茜の娘の相槌にさらに相槌をする。
 くせっけのないストレートをした少女、凛々しい体つきの男。というより少年。
「いや、せっかくのクリスマス前のいい雰囲気だろ? 詩音も圭一もカップルなんがから邪魔者はよそに行っていたって魂胆なのさ」
「いや、魂胆って……クリスマス、関係ありませんし、おかげで私婆っちゃに怒られるんですからね。魅音にまたいらない心配をしなくちゃいないです」
「えっと……まあ、おれは茜さんの言うこと賛成だけど」
 圭一の声に詩音は怪訝な表情を見せる。
「ちょっと。それって……いやらしいですね、圭ちゃん」
「いやらしいって……男としては期待するだろ、普通!?」
「いーだ! そんな普通他の女の子は許しても私、園崎詩音はだけは絶対に許しませんからね。もしかして圭ちゃん、浮気!?」
「まてまて……ちょっと詩音! なんでそんな突拍子のないことを言うんだよ!?」
「だったらこの場で私のことが好きー! っていいなさい!」
「ええっと……好きだ、詩音。これでいいか?」
 詩音は顔を紅潮しながらええと頷いた。
 それを見て茜はやれやれと嘆いていた。
「ところでお母さん、こんなところで何をやっていたのですか」詩音は訊いた。
「んー。まあ相談事かな。ところでさあ詩音。お前がもし……」
 そのまま茜は言葉を濁らせた。
「ん? 続きをお願いします」
「いや、いい。戯言さ。それよりさっさと帰ろう。寒くて凍え死んじゃうよ」
 詩音はそうですね、と言う。
 圭一はああ、と言う。
 そして茜は立ち上がり、3人雛見沢停留所から去る。
 そして雛見沢停留所には誰もいなくなった。


                                            おわり

2007/12/22 23:01 | SSCOMMENT(1)TRACKBACK(0)  

コメント

No title

こっちの茜さんは山○堂の激甘ワッフルなんか食べないやい!!w
ども、こんちは、ちーたです。

いろいろと思うところがありつつも、後書き?がこれから書かれるみたいなんで
その後にしようかなぁ、と思ったのですが、これだけは先に言っておきたかったのでw
本気感想はまた後日…。
あ、ちなみに私的には茜はみさき先輩を僅差で抑えてトップですv
別にお財布がもたなそうで…とかいう理由ではないのですよ!?ww

No:118 2007/12/24 10:04 | ちーた #k96R3Y0s URL編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 | BLOG TOP |